草原ヒストリー
STORY 1
阿蘇の草原は千年も前から人の手によって守られてきた
今見ているこの草原は、標高が高いから自然とできた草原と思われている方も少なくありません。そうではなく、阿蘇に住む人々によって維持されてきたのです。
その歴史は1,000年とも言われ、平安時代から①放牧(牛の放し飼い)、②採草(牛の食糧)、③野焼き(草を焼き害虫を駆除)を行い、継承されてきました。しかし、近年の都市化、地方の少子高齢化により、野焼きの人手が足りない等の理由によって、草原の維持が難しくなってきています。
本大会では、この草原を走ることで素晴らしい景色を体感いただき、草原維持活動に少しでも興味・関心を持っていただけたら幸いです。
STORY 2
野焼きの苦労
現在の阿蘇草原面積は約22,000ヘクタール。そのうち7割(約15,000ヘクタール)の面積で野焼きが行われています。これは阿蘇地域全体の約3分の1にあたる広さです。
毎年9月に輪地(防火帯)切り・輪地焼きを行い、3月に野焼きを行います。輪地の総距離は530㎞とも言われています。輪地だけでも相当な広さですね。
年間延べ2,300~2,500名のボランティアが支援活動を行っていますが、広大な阿蘇の草原を維持していくにはひと月では終わらないほど大変な作業なのです。
STORY 3
古道の役目
古代から昭和初期まで、この草原は地域にとって生活に欠かせないものでした。
牛は現代でいうトラクターの役割を担っていて、稲作をする上で重要な存在でした。各家では牛が飼われ、その餌として草原の草が使われていました。外輪山に広がる草原までの道が、古道なのです(阿蘇地域では「草の道」とも言われます)。
当時は、小学生になったら手伝いで古道を行き来していたそうです。その古道も、トラクターの導入による牛を飼う人の減少や道路整備などで使われなくなっています。
STORY 4
古道の整備
ASO FIELS RUNNING実行委員会では4か所の古道整備を行いました。地元に住む方や阿蘇中央高校の生徒さん、トレイルランナーなど、のべ80名の手で古道を整備しました。整備の前には、草原や古道の話を聞き、阿蘇の自然と歴史について知る機会を作ることができました。今回のコースはそれらの古道の一部を走ります。当時の石畳が見える箇所がありますので、ぜひお楽しみください。
STORY 5
30年後、6割の草原が消えるかもしれない
阿蘇の草原は、ここ約100年間で半分以下に、直近30年を⾒ても4分の1近く減少しました。2016年の熊本県の調査において、野焼きや輪地切りといった草原の維持活動を「10年以上継続可能」と答えた牧野組合は、面積比で約4割に留まっています。その背景には、現メンバーでは維持できるが、次の世代では難しいという見通しを持つ牧野組合が少なくありません。30年後を見据えると、非常に厳しい状況が予測されます。
草原が減ると、地下水量・河川水量が減少してしまいます。また、野焼き後に残る炭素の量は、阿蘇郡市の全世帯が1年間に排出するCO2量の1.7倍に相当。地球温暖化防止の観点からも、草原は未来に残す価値が高いのです。
引用:阿蘇草原再生プロジェクトHP
https://www.aso-sougen.com/
STORY 6
草原を次の千年へ
この素晴らしい草原がなければ、美しい景色もなくなってしまいます。走る楽しさも半減してしまうでしょう。
地元・阿蘇出身のトレイルランナー森本幸司選手は「世界中を走ってきたが、阿蘇のようなフィールド(景色)はどこにもない。これだけの美しい草原をもつ阿蘇は、貴重な場所だ」と話していました。
世界中から多くの観光客が訪れる阿蘇。この美しさが、さらに1,000年続いていくことを願っています。